インバウンド増を国が推進する背景には人口減による市場縮小をインバウンドによる収益で補うという側面がありますが、同時にインバウンドを地方に送客することによる地方創生という意味もあります。
宿泊者数で見るインバウンドの地方送客の状況
2018年度の日本人も含めた全国の延べ宿泊者数は5億902万人泊となりますが、10の地域に分けると下記のようになります。
最も多いのは関東地方の1億4,225万人で、比率は28%になります。
外国人宿泊客に絞った場合は?
では、外国人に限定した場合はどうなるのでしょうか? 外国人の延べ宿泊者数は8,859万人泊となり、前年比で11.2%増になります。
外国人に限定すると、ランキングも入れ替わりが見られます。 全体では7位だった北海道はインバウンドに限定すると3位に、全体では9位だった沖縄は6位にランクアップします。 また、地域ごとの内訳も変化があります。関東地方と近畿地方を合計すると約60%となり、3位の北海道以下は比率として10%にも満たないということがわかります。 では、地方を訪れるインバウンドが増加している、という報道はどうなのか、というと地方ごとの外国人の延べ宿泊者数の伸びを見ると全ての地方で増加しており、特に東北地方は前年比で34.7%、中国地方は21.6%と大きな伸びを示しています。 この数字から、実際に地方を訪れるインバウンドは確実に増えているものの、それを上回る勢いで関東地方、近畿地方にインバウンドが集中しているという構図が伺えます。 主な観光立国はほぼ例外なく観光客による地元住民の生活が侵害される、いわゆる観光公害が発生していますが、日本も京都などで観光公害が起きています。 また、インバウンドが関東、近畿の特定のエリアに集中することで宿泊施設の不足といった問題も懸念されます。
まとめ
インバウンドの増加によって京都の観光公害が問題視されるようになるなど、インバウンドが特定の観光地に集中してしまうという問題はまだ続いているようです。 一方で地方へのインバウンド誘致は少しずつですが進んでいるという見方ができますが、関東、近畿に集中しているインバウンドをもっと積極的に地方へと送客し、観光公害のような負荷を分散しつつ、地方創生に繋げたいというのが政府や地方自治体、旅行関係者の思惑になりますが、交通インフラの整備やインバウンドを誘引するだけの魅力的な観光資源の開発など、課題は残されています。