東京オリンピック・パラリンピックを来年に控え、さらに増加すると期待されるインバウンドですが、観光客が地元住民の生活を脅かす「観光公害」が問題となりつつあります。
今回は特に深刻な観光公害が顕在化している京都の事例から課題を認識、対策について検討をしてみましょう。
観光公害が深刻化する京都
観光公害はオーバーツーリズムとも言われ、世界的な観光地のほとんどが同様の問題に直面しています。 過去記事にもスペイン・バルセロナ、イタリア・ベネチアの事例やオランダ・アムステルダムの総量規制などを紹介しました。 インバウンド増による経済効果、という側面に目がいきがちですが、同時にオーバーツーリズムについても考慮することが必要です。 年間5000万人の観光客がおとずれる京都では観光客が移動手段としてバスを利用することで地元住民がバスを利用できなくなったり、住宅地での民泊利用者による騒音やゴミの問題などが顕在化しています。
京都・祇園は観光地ではないが・・・
京都に根付く花街文化ですが、京都・祇園の花見小路通は老舗の茶屋が立ち並ぶ情緒あふれる通りとして知られています。 近年、多くのインバウンドが花見小路を訪れるようになった結果、私有地への立ち入りや道を塞いでの撮影、芸舞妓を追いかけて無理やり撮影するなどのマナーを問われるような行為が頻発、地元住民やお茶屋が作る「祇園町南側地区協議会」は花見小路は観光地ではない、として京都女子大と協力、啓発看板を設置するなどの対策を実施してきました。
アンケートで見えてきた実態
2018年夏に実施した迷惑行為に関するアンケートでは下記のような実態が明らかになりました。
・喫煙、ごみのポイ捨て
・私有地への無断立ち入り
・提灯や格子戸の破壊
※アンケート調査の対象は会員260軒
この結果をもとに今年3月には京都市に改善を求める要望書を提出、6月には、市や同協議会、学識経験者らが参加する検討委員会が発足することになりました。 また、6月に行われた第1回の会合では、観光庁による実証実験が提示されています。 実験の内容は花見小路通やその周辺を訪れる観光客のスマホに、私有地への立ち入り、芸舞妓へのつきまといの禁止など、マナー順守の情報を多言語で一斉に自動配信するというもので、具体的な方法は未定としながらも早期の実施を目指しています。
観光客の集中、混雑には分散化で対応
京都市では「京都観光振興計画2020」において「外国人観光客の急激な増加とマナー問題」を課題の一つとして取り上げており、今後も上記の事例のような積極的な対策が求められるでしょう。 京都市は観光客の集中と混雑についても課題とし、時間、季節、場所を分散するという対策を進めていくという方針としています。 具体的な施策については過去記事『【外国人で大混雑問題】オーバーツーリズムの説明と京都の対策事例』で紹介しています。
まとめ
地域によって観光資源は様々ですが、京都の場合は古の都そのものの歴史と情緒、文化ということになり、「一見さんお断り」に代表されるような独自性はインバウンドによる混雑やインバウンド向けの看板などと相性が良いとは言えません。 しかし、観光立国化を目指す日本としては京都の直面する問題を他人事と捉えることなく、国レベルでの対策を講じていくことが必要になっていくのはないでしょうか?