多くの外国人観光客で賑わうニセコはパウダースノーと温泉が楽しめる世界的なリゾート地として知られるようになりました。
現在も外国資本などが高級ホテルの建設を行うなど、開発が進められているニセコですが、一部ではニセコ離れが始まっているといいます。
オーストラリアからの観光客が減少
2018年度に後志管内倶知安町に宿泊した延べ外国人宿泊者数は約46万5千人で増加傾向にあります。 2019年末に新千歳空港とシドニーを12年ぶりに直行便が結んだ効果、という見方ができそうですが、統計を見ると増加しているのは香港やシンガポールなどアジアからの観光客で、オーストラリアからは約11万6千人に留まり、2015年度と比較すると2割を超える減少となっていることがわかります。
高騰する物価、宿泊料金
主な原因として考えられるのがニセコ周辺の物価高騰です。 オーストラリア他、インバウンドからの人気となったニセコ周辺には資本が流入し、インバウンド向けに英語対応やスキー以外のアクティビティの充実が図られ、宿泊施設や飲食店等もインバウンド向けのサービスが増加していきます。 その過程で物価が高騰、富裕層でなければスキー旅行を楽しめない水準になったといいます。 SNSではハンバーガーのセットが2,000円、ラーメンが1,500円といった通常では考えにくい程の金額の食事の写真が散見されるようになりました。
雇用創出効果も微妙
スキーリゾートの開発によって周辺での雇用創出効果が期待できるのでは、という期待が地元ではありましたが、実際には毎年1000人程の外国人が短期アルバイトとして来日するため、英語での顧客対応が必要な仕事は外国人が雇われ、日本人の雇用が進んでいないという実態があるといいます。
宿泊税を導入した倶知安町
宿泊税は、各自治体が独自に実施している地方税です。 実施している自治体として大阪府、東京都、金沢市等が挙げられますが、倶知安町では2019年11月から宿泊費の2%を宿泊税として徴収することにしました。 試算によると通年で3億5000万円程度の税収が見込まれていますが、冬の時期だけに限定されるため大きな税収とは言い難く、町全体への恩恵は大きいとはいえないと関係者は語っています。
まとめ
今回取り上げたニセコの事例をインバウンド数だけで見ると依然として増加していることからスキーツーリズムの成功事例として捉えることも出来ますが、インバウンドによる地方創生という切り口では明るい現状とは言い難いのが実態です。 外国人によるバックカントリースキー中の脂肪事故が相次いでいますが、ニセコスキー場ではバックカントリーのコースを毎朝見回り、危険がないと判断したコースだけを開放、閉鎖時はコース内への立ち入りを禁止する等のニセコルールを2001年から運用し、事故防止をする等の努力を続けてきており、今日のニセコの高い評価はこのような地味な地元の人々の努力の積み重ねの結果です。 ニセコに限った話ではありませんが、近視眼的にならず、より長期的な視野に立った観光地開発が求められているのではないでしょうか?