訪日外国人観光客による医療費未払いトラブルが増加しています。
訪日外国人観光客のうち、約3割が旅行保険に未加入で、高額の治療費を払えないケースが多いことから、官民挙げた対策が講じられようとしています。
入国後に簡単に加入できる保険を発売したり、「踏み倒し」を防ぐマニュアルを作成したりして、治療を受ける側、受け入れる側双方のリスク軽減を目指していくようです。
訪日客の医療費未払い問題
厚生労働省による調査の結果、回答を得られた1378か所の医療機関のうち、外国人患者による医療費の未払いを経験している医療機関は35.3%、486か所に及んでいます。 調査結果は外国人観光客だけに限定した回答ではなく、日本在住の外国人も含まれているものになるため、インバウンド需要だけに原因を求めるのは早計という見方もありますが、いずれにしても医療機関にとって外国人患者の診療がリスクとなっているのが現状です。
訪日客向けの保険の出現
このような現状を踏まえ、大手損害保険会社による訪日外国人観光客向けの保険サービスの提供が始まっています。 各社の主なサービスの概要を見ていきましょう。
損保ジャパン日本興亜
損保ジャパン日本興亜は平成28年2月から「訪日旅行保険」を販売しています。 病気やけがの治療費など1千万円まで補償する他、医療機関の手配や電話による通訳を提供する等、日本語が不案内な外国人に向けた付帯サービスも充実しています。
東京海上日動火災保険
東京海上日動火災保険は「訪日外国人向け海外旅行保険」を販売中です。 補償額の上限は1千万円までで、けがの治療費や本国への移送費等もカバーされます。スマートフォン等から加入できる他、日本の文化やマナーについての情報が入手できる専用アプリも準備されています。
三井住友海上火災保険
三井住友海上火災保険は中国人の旅行者向けの保険商品「楽遊富士」を28年9月から販売を開始しています。 2017年に日本を訪れた外国人観光客のうち、全体の4分の1となる735.6万人の中国人観光客となる中、今後も増加が見込めるとして現地の保険大手と共同開発した保険商品です。 治療補償8万元(約138万円)に設定されている他、百貨店などで使えるクーポンの付帯サービスがつくなど現地のニーズに特化した保険商品と言えそうです。
政府もテコ入れ
このように損保大手が対応を見せる中、政府の対応策の準備も着々と進められています。 自民党によるプロジェクトチームは医療費を支払わず出国してしまう訪日客の再入国の拒否などを盛り込んだ提言案をまとめ、2018年5月にも政府に提出する予定としています。 提言案に盛り込まれる内容として訪日外国人観光客に対する入国後に加入できる保険商品の周知、医療機関でのカード決済の整備、不払い履歴のある訪日客の入国審査の厳格化等が挙げられています。
まとめ
2020年に東京オリンピックを控える中、訪日外国人観光客の急増傾向は以降も続いていくことが見込まれていますが、それによって新たな問題が顕在化していることも事実です。 医療費不払い問題はその中の一つの事例ですが、官民一体となった迅速な対応がインバウンド事業者、訪日外国人観光客双方にとってのソリューションとなるでしょう。