以前の記事でも取り上げていますが、訪日外国人観光客から挙げられることの多い訪日旅行における課題として言語の問題や景観の維持等がありましたが、観光地の混雑の緩和という課題も挙げられていました。
今回は完全予約制を導入した観光地の事例を紹介していきます。
メジャーな観光地は外国人観光客でいっぱい
インバウンド人口は右肩上がりで増えているわけですから、有名な観光地ほどたくさんの外国人観光客でいっぱいになるのは自明の理と言えます。 すると観光地によっては受け入れキャパシティを超えた国内外からの観光客が押しよせることになり、観光客、観光地双方に向けた対応が必要になっています。
各地の完全予約制導入事例
白川郷は2019年から完全予約制へ
導入経緯
世界遺産として外国人観光客にも有名な白川郷には多くの観光客が訪れますが、インバウンドの急増によって言語の問題、文化や習慣の違いによるトラブルも発生しているといいます。 白川郷を訪れる観光客の50~70%が外国人観光客と類推される中、2017年からは外国人スタッフを配置したり展望台行きシャトルバスの整理券を配布するなどの対策を講じてきましたが、それでも現場では混乱が続いているため、課題を解決するために抽選による完全予約制を2019年から導入するという決定がなされました。
今後の対応
美しいライトアップで知られる白川郷ですが、完全予約制によって参加できた観光客の満足度向上が見込める反面、抽選で外れた人からは不満が漏れることが予想できます。それでも完全予約制に踏み切った白川郷の試みについて、注視していく必要がありそうですね。
京都・瑠璃光院は予約制の夜の特別拝観を実施
京都市左京区上高野にある瑠璃光院は、数寄造りの建物と日本庭園の美しさで知られますが、文化財保護の為に通常は一般公開されておらず、春と秋に設けられている特別拝観期間のみ拝観することができます。
導入経緯
毎年、春と秋に特別拝観を実施しているのですが、SNSで鏡面の机に反射させた紅葉が人気を博し、開館前に長蛇の列ができるほどになり、人気の机の前には写真に納めたい観光客が塊ができ、ものすごい混雑になっていました。そのため、昨年の秋より夜の貸し切り特別拝観が実施されました。 ライトアップされた八瀬もみじの小径の幻想的な風景をゆったりと楽しむことができるこの貴重なプランは 東海旅客鉄道「そうだ 京都、行こう。」プランを申し込みした150名限定×10日間が対象との事です。
混雑回避には考慮する価値あり
残念ながら昨年の秋には人数のみ限定でしたが、今年の春から首都圏と静岡在住の方限定になりました。そのため、訪日外国人観光客の方は楽しむことができませんが、観光を楽しみたいというにニーズはなにも外国人観光客の方に限った話ではありませんので、このような形で特別な体験を提供するというのも観光地としての一つのアプローチではないでしょうか?
富士山での混雑対策
白川郷のケースと瑠璃光院のケースをそれぞれ見てみましたが、それ以外にも富士山等も1日あたりの登山者が多く混雑することが多く、分散して登山するように呼びかける等、特定の日や時間に登山者が集中しないような取り組みを進めています。 今のところ入山規制は行っておりませんが、将来的に更に多くの登山者が訪れるようなことがあれば富士山も白川郷同様に予約制等を含めたなんらかの対策が必要となるかもしれません。
混雑対策は考慮しておく必要あり
これから2020年のオリンピックに向けて、さらに外国人観光客の増加が見込まれています。 しかし、観光地側としてはインバウンドを含む観光客には来てもらって初めて価値が成立することなので、まずは受け入れの対策や課題解決の取組を前向きに実施し、その上で選択肢の一つとして予約制や規制、ということになるのが理想です。 ゲスト、ホスト双方にとって理想的なバランスはどこかを見極めながら対策をしていきたいですね。