インバウンド周辺では民泊やシェアサイクル等のシェアリングサービスが世界的に台頭し、普及しておりますが、タクシー業界にもUberという一般の人でも登録すればドライバーとしてタクシー同様のサービスを行うことができるサービスが立ち上がりました。
タクシー業界にとってはライバルが増えるわけですが、他にも難しい問題が起こりつつあります。
今回はタクシー会社がインバウンド需要に対してどのような取り組みをしているか、見ていくことにします。
タクシー業界の3つの逆風
①Uber
日本ではUberを使ったサービスの提供はいわゆる白タクになってしまうため、配車機能のみが利用される等、限定的な利用方法ですが、規制が緩和された場合、タクシー会社には大打撃となります。
②白タク
白タクといえば、主に中国人観光客を相手にした日本在住の中国人による白タク行為が横行し、空港等で取り締まりを強化するという一幕もあり、こちらも決定的な対策がないままになっています。
③自動運転技術
さらに2020年に完全無人タクシーの商用化実現に向けて自動運転技術ベンチャーのZMPは公道での遠隔型自動運転システムの実験を開始しています。
タクシー会社のインバウンドへの取組み
しかし、右肩上がりで増えるインバウンド人口はタクシー会社にとっては商機です。訪日外国人観光客にフォーカスした対応としていくつか改善すべきポイントがありますが、それぞれについて整理し、対策の事例を紹介していきます。
①多言語対応
翻訳機
タクシーに限りませんが、訪日外国人観光客にとって言語の問題は常に存在しています。自分の行先を正確にドライバーに伝達するのは簡単ではありません。 そこで翻訳機を活用しているタクシー会社があります。愛媛県松山市の伊予鉄タクシーはハンディタイプの翻訳機を導入し、ドライバーと利用客が行先の伝達だけではなくコミュニケーションをスムーズに取れるようにすることでインバウンド層の取り込みを狙っています。
外国人ドライバー
よりストレートな対策として外国人ドライバーの採用を強化しているタクシー会社もあります。 東京都文京区のタクシー会社・日の丸交通では訪日外国人観光客に快適なサービスの提供をするために外国人ドライバーの採用を推進しています。 2017年7月に在籍していた外国人ドライバーは4カ国、5人でしたが、2018年には11カ国23人まで増えています。
②キャッシュレス対応
訪日外国人観光客の国別ランキングで1位の中国ではスマホアプリを使ったキャッシュレス決済が一般化しています そのため日本でも「アリペイ」や「ウィーチャット・ペイメント」等の電子決済に対応する施設が増えています。 京都市伏見区の高速タクシーは2018年7月10日からスマートフォンのQRコード読み取り機能を使い、タクシー料金を電子決済可能なサービスを開始しました。 決済にはタクシーの助手席後部にタブレット端末を設置し、それを使って行うことができます。 決済用のタブレット端末はiPhoneの電子決済機能「アップルペイ」の他、「アリペイ」「ウィーチャット・ペイメント」にも対応しており、日本語以外に英語や中国語、韓国語といった多言語対応で利用客の利便性向上が期待されています。
③ハイグレード車両
年間を通して多数の訪日外国人が訪れる京都ですが、MKタクシーは、訪日する外国人富裕層の需要の取り込みに意欲を見せています。車両として一般的なセダンの他、ハイグレード車両としてアルファードを用意し、快適性やステイタス感を求める富裕層からの需要に応えています。 また、外国人富裕層はタクシーやハイヤーを借り切って利用することが多いのですが、荷物が多かったり、子供連れだったりするため、大型車両を用意することでより快適な旅を提供できるとのことです。
まとめ
タクシー業界にとってはチャンスと言えるインバウンド需要ですが、同時にシェアリングエコノミーといった逆風にも対応をみせる必要が出ています。 しかし、前述のMKタクシーでは車両の用意だけではなく、外国語ができるドライバーの育成等、より本質的なサービス向上に取り組んでいます。 シェアリングエコノミーにはない、「素晴らしいサービスを備えたタクシーに乗車した体験」は貴重なコト消費と言えるのではないでしょうか?