2017年も過去最高を更新したように、ここ数年インバウンドの増加が続いていますが、それによって新たに様々な問題が起きています。
その中の一つが観光バスによる問題です。
観光バスの駐車場が予約制に
訪日外国人観光客が移動の足として利用する交通機関として観光バスがありますが、観光地周辺では観光バスの滞留や駐車場の空き待ち等が原因の渋滞等の交通障害が深刻化しています。 そこで各地で観光バスの駐車場を予約制にするという動きが出ています。
日本各地の予約制になったバス駐車場
①奈良公園の県営駐車場
多くの観光客で賑わいを見せる奈良公園ですが、県営の駐車場はこれまで予約のない観光バスの駐車も可能でしたが、2018年8月16日から完全予約制とすることになりました。 これは駐車場の入場待ちをする観光バスによる渋滞の緩和が目的です。 2017年のデータを見ると全体の約7割が予約なしの観光バスとなっており、2013年度と比較すると2.6倍とインバウンド増が背景と推測される予約なしの観光バスが増加したことがわかります。
②歌舞伎町には事前予約制のバス駐車場がオープン
新宿・歌舞伎町周辺は観光客の乗り降りや待機をする観光バスによって渋滞が発生しており、2020年に控える東京オリンピック・パラリンピックでさらに訪日外国人観光客が増加することを考えると対策が必要とされていました。 そこで3月17日にオープンしたのが「歌舞伎町観光バス駐車場」です。 観光バス専用のこの駐車場は原則的に事前予約制となっていますが、空きがある場合に限り予約がないバスの駐車も可能になっており、交通障害の解消に貢献しそうです。
予約制以外の対策
観光バスによる交通障害の対策として予約制の駐車場についての事例を見てみましたが、渋滞そのものを解決しよう、という取り組みを見てみましょう。
鎌倉市は混雑課金制度を検討
混雑課金制度の内容と導入経緯
慢性的な交通渋滞が社会問題化していたロンドンが2003年に対策として取り入れたのが混雑課金制度です。 これはロンドン市内中心部の特定のエリアに特定の時間に車を乗り入れる際に料金が発生するという仕組みで、渋滞の緩和と公共交通機関の利用促進を目的としています。 同様の仕組みの導入を検討しているのが鎌倉市です。 鎌倉市は市内に入るための道路が限定され、渋滞が発生しやすい地形となっていますが、インバウンドの増加に伴い近年は年間延べ人数にして2千万人超が訪れると言われています。 これによってさらに深刻化した渋滞を解消する方法の一つとして混雑課金を検討し、平成32年度にも実験を開始する構えとなっています。
課金で生じたコストが利用者の負担になる可能性も
ロンドンでの混雑課金は一定以上の成果を感じているという声が多いといいますが、課金分が観光バス の運営事業者から旅行者へ転嫁されるという可能性があり、その場合は旅行者への負担を強いることになってしまいます。 鎌倉市以外にも京都市等はピークのシーズンには観光バスで日常生活に問題が生じるほどの渋滞が発生する等、今後さらに交通量が増えるようであれば混雑課金等の対策が必要になるという専門家の意見も聞こえてきますが、然るべき検証を行った上での導入が求められることになるでしょう。
まとめ
日本の場合、大規模な交通インフラを更に整備するのが難しいというのが現状ですが、政府の掲げる目標は2年後の2020年にインバウンド人口4000万人となっています。 実現のためにはそれだけの訪日外国人観光客をどのようにして受け入れするのか、という問題を避けて通ることはできません。 観光バスの駐車場の予約制は今後全国的な流れとなりそうですが、観光バス業界は以前の記事でも触れたようにドライバー不足等の問題も抱えています。 観光バスという一事業者だけの問題ではなく、自治体や地域住民の理解も含めた対策が今後求められるのではないでしょうか?