2018年9月、関西を中心に猛威を振るった観測史上最大級の台風21号は大きな被害をもたらしました。
インバウンド増に沸く日本でも大阪は訪日外国人観光客が特に増えている都市でもありますが、今回の台風で多くの人々が関西空港の閉鎖によって足止めをされた他、様々な被害を受けることになりました。
関空が閉鎖された場合の損失額は?
関西空港といえば日本の西の窓口となりますが、今回のように使用できなくなった場合にどのくらいの損失が発生するのでしょうか? 2017年8月の実績を元にして試算してみました。
損失金額は1日3億円以上?
2017年8月の関空からの入国者数は約57万人となっています。1日当たりにすると1万8千人が関空から日本に入国したことになります。 2018年4~6月期の訪日外国人の1人あたりの平均消費額は14万4千円、平均滞在日数が8.1泊でしたので、1人が1日に消費する金額は約17,700円となります。 これを先ほどの1日に関空から入国する人数に掛けた金額が関空が1日閉鎖された場合に生じる損失ですが、 なんと3億2千万円にもなります。
風評被害による損害も
実際には関空が閉鎖されたことで訪日をあきらめた、キャンセルしたという人々がいることを考えると旅行全日程分で期待できた収益が得られないということになってしまいます。 また、試算では前年と同じ人数が関空から入国した、という前提にしていますが、実際は前年よりも訪日外国人観光客の数が増加していることから、関空から入国する外国人観光客の数もさらに多いはずで、そうなると損失金額もさらに大きくなってしまいます。
台風21号 大阪の対応は?
「大阪周遊パス」を無料配布
今年は地震にも襲われた大阪ですが、台風21号の被害の中、訪日外国人観光客に対して地下鉄やバスを無料で利用することができる「大阪周遊パス」を無料配布するという対応を用意しました。 対象となるのは9月4日から12日に関空から出国を予定している外国人観光客で、関空の閉鎖によって帰国できなくなったり、旅行の日程変更を与儀なくされた人々にとって少しでも大阪を楽しんでもらいたい、という趣旨で配布が行われました。 対象者がパスポートと航空券を大阪市内の「大阪観光案内所」または「難波観光案内所」に提示することで受け取ることができます。
多言語対応の専用回線設置
また、休日も対応する観光相談本部を設置し、多言語対応専用の回線を用意するという対応がとられました。
大阪府の今後の取り組み
台風21号では関西空港が閉鎖することになった他、その他多くの交通機関も不通となり、混乱を招きました。 同様の事態は2018年6月に起こった大阪府北部地震でも発生しており、訪日外国人観光客への迅速な災害情報の提供が今後の課題となっていました。 そんな中、台風21号の被害を受けて9月7日、松井一郎大阪府知事は大阪府戦略本部会議を開き、訪日外国人観光客を対象とした災害時の対応策を協議し、必要な情報を多言語でメール配信する仕組みを構築するという方針を明らかにしました。
まとめ
台風21号の被害がまだまだ残るタイミングで今度は北海道を震度7の地震が襲い、訪日外国人への情報提供やケア体制の脆弱性が浮き彫りになってしまいました。 日本が観光立国を目指す上で訪日を予定している外国人に対する情報提供をどのように行うか、という施策は必ず必要になってきます。将来的な課題ではなく、今すぐの緊急性の高い課題として国や自治体を中心に実効性のある仕組みづくりが求められています。