民泊、というと訪日外国人が利用者、という視点になりがちですが、民泊を違う切り口で捉え、活用するという事例があります。
宮崎県児湯郡新富町の一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(以下、こゆ財団)は昨年12月1日
から始めた民泊を活かした試み、「お試し移住サービス」は民泊を手段として捉えた注目すべきサービスです。
民泊を手段として活用
サービスの対象となるのは同町への移住を検討している人になるのですが、同サービスを利用することによって移住する前に同町での生活や働き方等を体験・模索することが出来ます。 同町では定住人口とは別に地域と関わりを持つ「関係人口」の増加をテーマとしており、その一環としてスタートしたこのサービスでは民泊施設をなんと無料で利用することができ、同町での暮らし方や働き方を体験し、探ることができます。
民泊以外にも手厚いサポートが
宿泊施設として利用できる「新富ノ家」は2つの和室にキッチン、バスルームが付いた一軒家で、最寄りのJR日向新富駅から徒歩1分。駅前にはバス停や無料駐車場がある他、こゆ財団が実施する電動自転車のリサイクルシェアを利用することもできます。 周辺にはコンビニエンスストアや温泉施設もありますので、町内での生活はストレスなく楽しめます。 また、移住を検討する場合にどのようにして働くか、生活するか、という点が最も気になるところですが、短期間の滞在でも多くの情報が得られるような配慮が行われています。
民泊を活用した課題解決
こゆ財団は関係人口の創出や人財育成などを目的として東京都内で計16回の講座やイベントを開催し、これまでに延べ456名が参加しています。 参加者の中には実際に来訪し、滞在した例が数多くありますが、毎月第三日曜に開催される「こゆ朝市」に合わせて来訪するケースが増えています。 しかし、朝市を通じた関係人口は1年半で8000人以上と増加しており、宿泊施設が限定的な町ではイベントを通して同町への滞在が日程や宿泊施設の都合などによって制限されてしまう、という課題がありました。 そこで民泊を活用し、課題を緩和しながら移住希望者を受け入れる体制が作られたというわけです。
ゲストハウスによるインバウンド獲得の施策も計画中
同町では新たな試みもスタートしています。移住者と連携しながら古民家をゲストハウスとして活用、インバウンドを呼び込むというこのプロジェクトは日本遺産・新田原(にゅうたばる)古墳群や、全国茶品評会で農林水産大臣賞に3年連続で選出された茶園などの観光資源をアピールし、ゲストハウスを中心としてサービスを充実させていくというもので、2019年は同プロジェクトを担当する地域おこし協力隊員を10名採用する予定となっており、前述したお試し移住サービスを利用して移住を検討している希望者は協力隊員として職を得ながら移住が可能という形も考えられます。
まとめ
今回紹介した事例は民泊の活用方法として移住者のために町での生活を体験する施設として捉え、その後古民家をゲストハウスとしてインバウンドを呼び、町起こしにつなげるというものです。 プロジェクトを成功させるためには国内外へのプロモーションが必要ですが、民泊=インバウンドだけではなく、国内需要に目を向ける必要性があることや民泊そのものを収益手段としていない点が新しいと感じました。 地方の町おこしや移住推進のようなケースではそのまま実施できる素晴らしい取り組みですね。