関西には数多くの世界遺産が溢れています。奈良の法隆寺、京都の清水寺、兵庫の姫路城、和歌山の高野山、滋賀の延暦寺と日本有数の観光地になっている場所ばかりです。しかし、大阪だけは今まで世界遺産に登録されていませんでした。そんな中、7月末に仁徳天皇陵(大仙古墳)を含む周辺一帯の『百舌鳥・古市古墳群』が世界遺産登録に推薦されました。詳しく見ていきましょう。
4度目の挑戦で『百舌鳥・古市古墳群』の推薦決まる
そもそも世界遺産とは 世界遺産は、1972年のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づいて世界遺産リストに登録された、遺跡、景観、自然など、人類が共有すべき「顕著な普遍的価値」を持つ物件のことで、移動が不可能な不動産やそれに準ずるものが対象となっている。
wikiより
百舌鳥・古市古墳群とは
大阪府堺市ある4世紀後半から5世紀後半にかけて造られた49基に上る古墳群です。なかでも、仁徳天皇陵(大仙古墳)は全長486メートルに及ぶ前方後円墳で、クフ王のピラミッド、秦の始皇帝陵に並び世界最大級です。日本列島における古代王権の成り立ちを表す遺跡とされています。
4度目の挑戦により世界遺産に推薦が決定した『百舌鳥・古市古墳群』。ただ、まだまだ登録には遠そうです。メインの仁徳天皇陵(大仙古墳)ですが、なぜ2つの名前があるかというと、実は埋葬者が特定されておらず、しっかりとした特定調査も行われていないため、地名で呼ぶ「大仙古墳」とする場合と、参考書物に示されていた「仁徳天皇陵」の2つあります。世界遺産に登録されるためにはこの辺りの迅速な調査が必要のようです。
これからの世界遺産登録までの流れ
世界文化遺産に登録されるかどうか決まるまでには、推薦されてから2年かかります。 今後の動きを簡単にまとめました。
①7月31日の文化庁の審議会で国内候補地が決定。←現在 ②9月に、政府は「ユネスコ世界遺産センター」に暫定版の推薦書を提出します。 ③来年1月ごろ、正式な推薦書を提出。 ④来年の夏から秋、ユネスコの諮問機関である「イコモス」が現地調査。 ⑤再来年の5月ごろに、イコモスが評価結果をユネスコ世界遺産委員会に勧告。 ⑥再来年の7月ごろ開かれるユネスコ世界遺産委員会で登録。
これだけの行程を経てようやく登録されるようです。
日本の世界遺産
ちなみに日本の世界遺産は7月9日、世界文化遺産への登録が決まった宗像・沖ノ島と関連遺産群を含め、21件(文化遺産17件、自然遺産4件)になりました。世界遺産登録数の国別ランキングでは現在12位と微妙な位置です。
世界遺産登録の効果
例①『白川郷』
1995年に世界遺産登録された白川郷。合掌造りが美しく、自然豊かな景色が広がっています。社会の教科書に必ず取り上げられるので、行ったことなくても見たことはあるではないでしょうか?そんな白川郷では1995年には77万人が訪れていましたが、登録されてからは100万人を切ることはなく、現在では180万もの人が訪れています。
例②『富岡製糸場』
世界の絹産業に貢献した富岡製糸場は2014年に正式登録され、その年の4月下旬以降、前年同期比で3倍の約20万人が来場しました。
例③『平泉』
平泉は仏国土(浄土)を空間的に表現した建築や庭園などに反映され、現在も宗教儀式や民族芸能に受け継がれていることから2011年に世界遺産登録されました。登録された際の岩手県への経済効果は年63億円にも上ります。
例④『石見銀山遺跡』
島根県大田市の石見銀山遺跡が2007年に世界遺産に登録されました。しかし、登録直後の観光客は80万人を超えましたが、16年は約30万人となり、登録前の水準になっています。この理由としては遺跡は一見、森に覆われた集落があるだけのように見えてしまい、写真の見栄えもあまり良くないことから、SNSでの拡散は見込めず難しい状態にあるようです。
『百舌鳥・古市古墳群』が世界遺産になった場合は?
公益財団法人堺都市政策研究所は世界遺産に登録されれば、府全体で1年間に約1005億8400万円の経済効果があるとの試算を発表しました。観光客らが前年比で約561万4000人増えると仮定。 このうち、仁徳天皇陵(大仙古墳)がある堺市では、約338億3900万円の経済効果があるそうです。
参考:古墳群の経済効果1千億円と試算 世界遺産登録で大阪
今後の課題
これだけの効果が期待されてはいますが、メインの仁徳天皇陵(大仙古墳)は中には入れないだけでなく、その広大な姿を見れる場所があまりありません。そのため、このままでは石見銀山遺跡同様に残念遺産として扱われる可能性が高いです。 また、さきほど挙げたように埋葬者の特定も済んでいないため、登録されるのかはまだまだ難しそうです。