インバウンド増によって経済的恩恵を最も受けているのは、と考えるとまず思い浮かぶのは宿泊施設ですが、観光庁が発表した2018年の宿泊統計調査からも外国人宿泊者数の増加という結果が得られており、印象を裏付けています。
しかし、日本人客を含めた全体は前年比で0.1%減となっています。
日本人宿泊者に限定すると前年比2.7%減
2018年度の延べ宿泊者数は5億902万人泊となっておりますが、これは前年比で0.1%の微減となっています。 内訳は下記のようになります。
・日本人宿泊客:4億2043万人泊(前年比2.2%減)
・外国人宿泊客:8859万人泊(前年比11.2%増)
日本人宿泊客は続落していますが、外国人宿泊客の数は続伸しており、過去最高を記録しています。
日本人の京都離れが進行中?
日本人宿泊客の減少が目立つのは京都です。 京都市内で宿泊した日本人観光客数は4年連続となるマイナスを記録している他、日帰りで京都を楽しむ日本人客も前年割れしていると言われています。 要因の一つとして挙げられているのが以前の指摘したオーバーツーリズム問題です。 インバウンドを含む過剰な観光客の増加がもたらす混乱が日本人観光客の足を京都から遠ざけている可能性があります。 観光公害ともいわれるオーバーツーリズムは世界各国で見られる現象で、ベネチアやアムステルダム、バルセロナ等を代表的な例として挙げることが出来る他、国内では京都の他に白川郷等が該当します。
ゆったりとした京都が遠ざかる
京都本来の魅力とはゆったりした雰囲気の中で古の都の風格や文化を味わうことではないでしょうか? 例えば銀閣寺は椿の高い生垣にはさまれた細く長い参道を歩きますが、これによって俗世間から離れ、将軍の別荘へと足を踏み入れるという期待が高まるように計算されて作られています。 しかし、現在の生垣の中でひしめき合う人々の姿からは意図通りに銀閣寺の魅力を味わうことは難しくなっていると言わざるを得ません。 また、以前の記事でも取り上げましたが、京都は観光地の混雑だけではなく、市バスの利用が困難になる等、市民生活にもオーバーツーリズムの影響が出ています。
まとめ
現在、日本は観光立国化を促進していますが、インバウンドの誘致は成功と言える増加を見せる反面、オーバーツーリズムのような弊害についてはまだ対応が遅れているという状況です。 京都の魅力を求めて世界中から観光客が集まるのは素晴らしいことですが、それによって本来の魅力が損なわれ、日本人の足が遠のいているということは、外国人観光客もいずれ京都に足を運ばなくなってしまう可能性が考えられます。 より実効性のあるオーバーツーリズム対策が求められています。