2018年6月15日から施行されることになった民泊新法ですが、民泊事業者として届け出を行うことで合法で民泊事業を行えるというものですが、替わりに様々な義務が課せられるようになりました。
全国的に届出が伸び悩む中、北海道札幌市の届出件数は突出して多くなっています。その理由はどのようなところにあるのでしょうか?
民泊新法で発生した義務とは?
民泊新法によって民泊事業が合法になったわけですが、同時に課せられることになった義務のために届出を行うことをためらう民泊オーナーが多いと言われています。 具体的な義務には下記のようなものが挙げられます。
①年間で180日が提供上限 ②所有者=事業者以外に、管理者が必要 ③宿泊者の安全・快適性・利便性の確保、宿泊者名簿の作成義務 ④近隣住民からの苦情窓口の設置義務
特に提供上限が180日、という点が民泊物件の収益性に大きく影響することが届出が伸び悩む最大の原因でしょう。
民泊新法施行日時点での届出数
観光庁の資料によると、法施行日の6月15日時点で民泊事業の届出は全国で3728件、そのうち2210件が受理済みとなっています。
自治体別で1位は札幌市
1位:札幌市 届出570件 受理済み337件 2位:新宿区 届出186件 受理済み54件 3位:大阪市 届出179件 受理済み97件 4位:福岡県 届出164件 受理済み87件 5位:沖縄県 届出145件 受理済み92件
2位の新宿区の3倍以上の届出数であることからも、札幌市の届出数が突出して多いということが分かります。 では、なぜ札幌市の民泊届出がこれほど多いのでしょうか?
北海道が人気の理由
札幌市の民泊届出が多いことには主に2つの理由がありました。 それぞれについて見ていくことにしましょう。
①季節変動が大きく、180日制限の影響が薄い
北海道・札幌の観光のトップシーズンはなんといっても冬ですね。雪まつりやスキー等、たくさんのイベントや楽しみ方があり、多くの観光客が訪れます。 また、初夏も避暑等を目的として人気のシーズンになります。 では、それ以外の季節はどうでしょうか?実はイベント等がない限り、その他のシーズンは観光地としては落ち着いた状態になるのです。 民泊新法の最大のネックである180日制限によって登録をためらう民泊オーナーはそもそも年間フルに稼働することを前提にして事業を計画していますが、札幌・北海道の場合は人気のシーズンを除いては元々稼働率が低いため、180日制限の影響があまりないということが言えるでしょう。
②家賃が安く、利益が出やすい
民泊オーナの中には物件を賃貸契約し、民泊で得られる収入から家賃を支払い、差額を利益とする形で事業化している場合が少なくありません。 その場合、家賃は安ければ安いほど利益が出やすくなります。 全国賃貸管理ビジネス協会が2018年5月に調査した1部屋あたりの全国平均家賃は、全国平均が50,278円なのに対して北海道は42,125円とかなり安いことがわかります。 これは東京、大阪、京都等の訪日観光客に人気の都市と比べると圧倒的に安いため、民泊事業にとっては有利な環境になります。
まとめ
その他、北海道は届出にあたり事前相談は不要、身分証明書の省略等届出を簡素化していますが、 届出数で2位となった新宿区の場合は事前相談を推奨し、 届出の受理前に任意の現地調査を実施する等、届出の手続きそのものも北海道は他の自治体と比較してハードルが低いことが届出数につながっていると思われます。 しかし、突出した届出数となった札幌市にしても民泊新法前の民泊物件の数からするとまだまだ届出が少ないのが現実です。 増加するインバウンドの宿泊先を合法的に提供することが目的でスタートした民泊新法ですが、当初の思惑とは反対の方向に向かっている現状を踏まえ、見直しや対策が必要になるのではないでしょうか?