2018年には大阪、北海道で大きな地震があった他、関西、中国地方では台風や大雨による大規模な被害が発生しました。
インバウンド数の増加につれてこのような災害が発生した際に外国人に対して適切な対応ができるのかどうかは観光立国化を進める上で地震等の自然災害が多い日本にとって重要なポイントです。
2019年7月、豪雨に見舞われた鹿児島では88万人に避難指示
直近では7月上旬に九州地区を豪雨が襲い、7月4日の午前10時時点で約88万人に避難指示、23万人に避難勧告が出され、527カ所の避難所にピーク時で約8800人が避難しました。 このようなケースでは避難指示、避難勧告を外国人はどのように受取るのでしょうか?
情報を伝える際への問題点
①スマホや携帯の表示がわからない…
佐賀県内には約6千人の外国人が在住していますが、2018年7月の西日本豪雨の際に避難勧告・指示が出されたものの、携帯電話やスマートフォンに表示された日本語の意味がわからない、読めない、という外国人からの電話が相次ぎました。 そのため、佐賀県国際課と県国際交流協会は電話対応の他に協会のFacebookに英語や中国語他、数カ国語で災害警戒を翻訳し、配信する対応を行いました。 しかし、この対応を経て実際に避難行動が行われたのかどうかについてはわからず、県内在住外国人の避難人数についても各自治体からの報告が上がっていないため、実態が把握できていません。
②外国人へどのように災害情報を伝えるか
西日本豪雨での外国人への対応を通し、情報伝達の仕組みの脆弱性が明らかになったことを受け、佐賀県では多文化共生地域連携推進事業を嬉野市、唐津市で開始しました。 嬉野市ではインバウンド向けの防災対策について外国人への防災情報対策に関する有識者による講演を6月下旬に行い、観光業界の関係機関約50人が受講しています。 しかし、直接インバウンドに接触し、対応実務を行う宿泊関係施設の参加は5施設のみと、理想的とは言い難い状況となっています。
これから改善が必要なポイント
①伝達手段の見直し
このブログでも昨年の大阪地震、北海道地震を例に外国人がどのように情報収集を行ったかについて記事にしていますが、自治体が情報入手先として用意しているコールセンターをはじめとしたインフォメーションセンターは意図するほど活用されていない様子です。 同様に観光庁がインバウンド向けに開発した災害情報配信アプリ、「Safety tips」についてもダウンロード数から見て認知されているとは言い難い状況です。
②情報提供側と受信側のギャップ解消
訪日旅行中に被災した外国人を対象としたアンケート調査についてまとめた記事では主に外国人は下記のような方法で情報を入手していることが分かります。
・日本語話者はテレビ・ラジオ
・それ以外は母国語のウェブサイトやSNS
・宿泊先の従業員に尋ねる
災害発生の時間や条件によっても情報収集を行うメディアに違いがでますが、SNSやウェブメディアに多言語で情報を配信することができれば多くの外国人により正確な災害情報を伝えることができそうです。 いずれにしても情報の出し手と受け手のギャップ解消が求められます。
まとめ
見逃せないのは宿泊先の従業員に尋ねる、という回答が災害発生時の条件に関わらず上位に来るという点です。 観光庁では平成26年度に「自然災害発生時の訪日外国人旅行者への初動対応マニュアル策定ガイドライン」を作成、宿泊施設や観光地が取るべき初動対応についての指針を示しています。 しかし、今回取り上げた佐賀県の事例を見るとインバウンド向け災害対策についての有識者の講演に宿泊施設は5施設しか参加していない、という点を見るとここにも意識のズレが存在する可能性があります。 地震が多い、という印象を持たれている日本だからこそ、災害時の対応をしっかり行い、訪日リピーターを手放さない努力が必要ではないでしょうか?