2019で年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック、パラリンピックとビッグイベントが続きます。インバウンド増の絶好の機会ですが、拡充が求めらる分野の一つが通訳ガイドです。
今回は通訳ガイドの実情について見ていきましょう。
通訳ガイドとは
まず通訳ガイド(通訳案内士)と一般通訳業務の違いについて整理しておきましょう。
通訳ガイドの仕事は通訳+ツアーマネジメント
一般に通訳ガイドと呼ばれているのは国家資格である全国通訳案内士試験に合格した方で、通訳案内士法で「報酬を得て、通訳案内(外国人に付き添い、外国語を用いて、旅行に関する案内をすることをいう)を業とする。」と業務を定められています。 インバウンドに対して通訳サービスを提供し、旅を楽しめるようにすることはもちろんですが、それにあわせて添乗員として旅行そのものを円滑に進めるマネジメント能力が求められます。 言語能力も必要ですが、対人コミュニケーションや機転を利かせた対応などをその場に応じて行うということが理想的な通訳ガイドの姿と言えます。
一般通訳の仕事は通訳によるコミュニケーションの円滑化
一般通訳の仕事は元の言語の意味を可能な限り忠実に翻訳し、伝えることが求められています。 また、通訳業務を会議の間、と設定された場合はその時間のみクライアントと行動を供にし、通訳業務を提供するということになります 一般通訳として移動にも帯同する、というケースもありますが、その場合は通訳は行いますが移動に伴って発生する各種調整などのガイディングは行わないことがほとんどです。
通訳ガイドの問題点 国家資格がなくても通訳ガイドが出来る?
増加を続けるインバウンドに対して通訳案内士が少ない、という点が以前より指摘されていましたが、平成30年1月4日に改正通訳案内士法が施行され、国家資格所有者を「全国通訳案内士」とする他、資格がなくても「地域通訳案内士」として有償で通訳業務を行えるといった規制緩和が行われました。 アドリンクでもこの法改正について過去記事『低い合格率「通訳案内士」が規制緩和?それでも人が増えない理由』に取り上げており、ボランティア通訳の増加などの効果が見込めるものの、資格取得者の減少や英語話者に通訳ガイドが偏っている問題などは解決しないのではないかと指摘しています。
通訳ガイドが直面しがちな苦労とは?
このように通訳ガイドの仕事については間口が広がったものの、実際に通訳ガイドを業務として行う場合には様々な苦労があると言います。 8月3日に通訳ガイド70数名が参加して行われたワークショップでは通訳ガイドを行う上で発生しがちなシチュエーションを共有し、対策や対応についての意見交換が行われました。 その一部を紹介します。
飲食店に食品や飲み物を持ち込んでしまう
日本では飲食店に外部から食べ物や飲み物を持ち込むのはご法度ですが、国によっては全く問題がない、という場合もあります。 そのため、事前に日本のルールを説明する、といった文化の違いを認識してもらう必要があるという意見があった他、お店に交渉してきちんと注文する代わりに持ち込みを認めてもらう、という意見もありました。
電車内など公共の場で大声で会話をしてしまう
これも文化の違いが元になっているケースですが、その場で指摘してお客様に恥をかかせるのではなく、降車してから注意をするという意見の他、乗車前に一般的なマナーを周知しておくことで適切なふるまいをしてもらうのが理想的という意見も出ています。
予約が難しい飲食店の予約を当日にキャンセルしたいと言われた
飲食店の場合は予約に応じて材料の仕入れを行っているため、当日のキャンセルは痛手以外のなにものでもありません。キャンセル理由を確認し、キャンセルチャージを支払ってもらうといった対応の他、予約時点で当日、直前のキャンセルはできない、料金が発生することを認知してもらうべきという意見がありました。
まとめ
日本の常識に照らした場合、必ずしもマナーが良いとはいえないインバウンドのふるまいを目にすることがあるのも事実ですが、その多くは文化の違いをお互いに認識していないことに起因しています。 そのようなギャップを埋め、インバウンドの訪日体験を向上させる上で大きな働きをすることができる通訳案内士ですが、給与面など必ずしもその重要度に見合った扱いとは言えないのが現状です。 通訳ガイドの数を増やし、かつ質をしっかり担保する仕組みを国、業界が作っていくことが求められています。