急増するインバウンドに対して対応が求められる分野の一つに宿泊施設があります。
そこで不足する宿泊施設を拡充する方策として期待されていたのが民泊です。
今回は多くのインバウンドが年間を通して訪れる京都における民泊の現状を見ていきます。
京都の民泊、新規許可件数は減少
京都は日本有数の観光地として知られ、国内外から多くの観光客が訪れていますが、一方で問題になっているのが観光公害、オーバーツーリズム問題です。 多くの観光客が押し寄せることで元々居住している市民の生活が脅かされる現象がオーバーツーリズムですが、京都に限らずスペイン・バルセロナやイタリアのベネチア等、世界の観光地に共通してみられる問題と言えます。
京都の宿泊施設は足りている?
京都ではバス、地下鉄などの公共交通機関が観光客で混雑し、課題となっていましたが、民泊施設による市民生活への影響も大きい問題となっていましたが、京都市の門川大作市長は11 月 20 日に行われた記者会見で「市民の安心・安全や、地域文化の継承を重要視しない宿泊施設の参入を今後はお断りしたい」と述べ、事実上のお断り宣言となっています。 京都市が必要とする宿泊施設の部屋数は4万室、という試算がされており、3年前には約3万室しかありませんでした。そのため新たな宿泊施設の誘致や拡充が行われ、今年3月の部屋数は4万6千室にまで増加していました。 さらに現在建設中の宿泊施設などを加えると京都市内の宿泊需要をカバーすることができる、ということから今回の決定がなされています。
地域住民の理解を得られない民泊施設=観光公害
民泊についての問題として、宿泊利用者のマナーのない振舞いなどによって元々の住民の生活環境が乱れる、ということがありますが、京都市はこのような民泊施設によるオーバーツーリズムの解消のために民泊施設の新規許可を制限するという形で市民の暮らしを大事にする、という形を取ることにした、というわけです。
京都市は2015年から違法民泊対策を強化
京都市の民泊に対する取組みは民泊ニーズが急増しつつあった2015年から始められており、違法の可能性がある民泊物件を発見、根絶するためのプロジェクトチームを発足しています。 さらに2018年6月には住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されたことで違法性の高い民泊施設が激減、京都市内で旅館業法の許可を取得した宿泊施設の新設のピークは2018年の夏と考えられ、2019年度上期(4~9月)の京都市の宿泊施設(ホテル・旅館・簡易宿所)の新規許可件数は345件で、前年同期比 で31% 減となっています。
まとめ
今回は京都についての事例を紹介しましたが、民泊による周辺住民とのトラブルは京都に限らず全国的に発生しています。 民泊新法によって民泊運営のハードルが上がり、民泊事業そのものの在り方が問われる事態になっていますが、京都のように観光客の宿泊先として期待された民泊物件による騒音やマナー違反などが京都本来の魅力であるいにしえの古都の風格やゆったりとした雰囲気を壊してしまうとしたら本末転倒です。 今回の京都の決断は全国的にも影響力がありそうですね。