訪日外国人観光客が日本で楽しむコト消費の代表的な事例として料理教室があると前回の記事で紹介しましたが、今回のテーマは自転車です。
外国人観光客に人気のサイクリングツアーについて見ながら、サイクルツーリズムとシェアサイクル事情についても調べてみました。
どれくらい人気なのか?
外国人が観光名所を調べるにあたって、よく使うWEBサイトのトリップアドバイザー。 こちらの『外国人に人気な体験・ツアーランキング』で、サイクリングが30位中5件もランキング入りしていました。 つまり、サイクリングが人気の体験ツアーになっています。 なぜ人気なのかについて、ランクインしたツアーから調べてみました。
外国人に人気のサイクリングツアー事例
①Cycle Kyoto
トリップアドバイザーによるランキング、外国人に人気の日本の体験・ツアー2018で6位に選ばれたのが「Cycle Kyoto」です。
サービス内容
京都市内を自転車に乗って観光することができるこのツアーは南コース、北コース、京都全域と3つのコースが用意されており、自転車やヘルメットのレンタル費用や昼食代も含まれていてリーズナブルに参加することができます。
外国人に人気なポイント
京都を観光する場合は公共交通機関を利用して移動することが一般的ですが、自転車で移動することで公共交通機関からは見ることのできない京都の日常の風景を楽しむことができるとして人気を集めています。また、バスガイドなどの形式張ったガイドではなく、型にはまらないガイドが受けています。
②東京みらくるサイクリングツアー
同ランキングで9位となったこちらは前述した「Cycle Kyoto」の東京版、「東京みらくるサイクリングツアー」です。
サービス内容
このツアーは東京都内中心部を自転車で巡るセントラルコースの他、リバーサイドコース、シティサイドコースを用意しており、いずれも半日(約3時間)でガイドを受けながら東京の名所を巡ることができる人気のツアーです。
外国人に人気なポイント
こちらも同様に電車やバス以外の交通手段で、より詳細な東京について短時間で知れるということで人気のようです。また、ガイドの対応が面白く行き届いてることをあげている外国人が多くいました。
自転車とインバウンド、2つの関わり方
このように自転車とインバウンドという切り口にはさらにビジネスチャンスがありそうですが、大きな2つの流れについて整理してみます。
①シェアサイクル
まず一つはシェアサイクル事業です。 NTTドコモと子会社のドコモ・バイクシェアが始めた自転車シェアリングサービス、「ドコモコミュニティサイクル」や大阪市内で2012年からサービス提供を開始した「HUB chari(ハブチャリ)」、ソフトバンクとOpenStreetが共同運営する「HELLO CYCLING」等、以前の記事で紹介したサービスの他、中国で話題となったMobike等のサービス開始が伝えられています。 こちらは手軽な移動手段としての自転車、という位置づけになりますので、利用者の母数が多いと言えますが、事業を行うためには自転車そのものの数を用意する必要があることや貸し出し、返却をどのように行うか、決済をどのように行うかといったインフラ投資が必要となります。 そのため地方の観光地での観光を楽しむためにシェアサイクルを利用する、というような補助的な位置づけが参入しやすいのではないでしょうか。
②サイクルツーリズムで地方創生
観光庁は2020年にインバウンド人口4000万人を目標として掲げていますが、強化の対象となっている13のテーマのうちの一つが自転車です。 これは海外のサイクリストをターゲットにしたもので、ロードバイク等でのサイクリングを日本で楽しむ、という提案になります。 海外でも同様の試みは行われており、スイス、ドイツ、台湾、韓国等が有名です。 国内へ目を向けると1999年に完成した「西瀬戸自動車道(瀬戸内しまなみ海道)」は世界中の自転車愛好家にも知られる存在で、本州と四国に渡る橋を自転車で走り、美しい景観を楽しむことができます。 地方創生の一つの方法としてサイクルツーリズムは非常に有効な手段と言えますが、安全面のバックアップや荷物を持ち運べない、補給調達設備、道に迷う可能性、自転車のパンクや故障をケアする仕組み等、準備するべき課題があります。 しかし、「しまなみ海道」のケースを見ると行政が多言語対応したサイクリングマップを作製したり、サイクリストが地元と交流できるように「しまなみサイクルオアシス」と呼ばれる拠点を整備したり、パンク対策として自転車用タイヤチューブの自動販売機の設置、手荷物配送サービス等の対応を行っています。
まとめ
日本のサイクルツーリズムはまだ始まったばかりです。地方にはたくさんのサイクリストが楽しめる美しい景観を持った場所がありますので、それらを資源として活用することで外国人サイクリストの送客が可能なはずです。 最近ではサイクルツーリズムに特化した旅行代理店が売上を伸ばしている、というニュースもありますので、地方自治体も絡めた動きで世界のサイクリストに向けて地元をアピール、という動きが全国で活発化しそうですね。