訪日外国人観光客の増加に対して宿泊施設の不足が問題視されていますが、対策として注目されているのが民泊です。
2018年6月15日から施行される民泊新法(住宅宿泊事業法)はインバウンド需要で不足が懸念される宿泊先を増やすという目的もあり、これまで法的にグレーなまま行われてきた民泊事業を届出制にして違法民泊施設をなくすとともに、民泊事業者の増加を目的とした法改正です。
民泊新法の施行を前に行われた対策の事例をいくつか見ていきましょう。
大阪府箕輪市は民泊専用ごみ袋の義務付け
民泊施行を控える6月2日、大阪府箕輪市は住居専用地域の生活環境の維持を目的として民泊専用ごみ袋の使用を義務付ける条例の改正案を提出しました。 条例は6月の議会で成立すると見られており、7月1日施行を予定しています。 ごみ袋は有料で30リットル1枚が2470円と通常の指定ゴミ袋が1枚61円なのと比較すると約40倍の価格になりますが、価格には収集費用が含まれている他、外国人利用者に配慮して英語、中国語、韓国語で表記された多言語対応版のごみ袋も用意する見通しです。
懸念される民泊施設の犯罪拠点化
犯罪拠点になる可能性
民泊は主に外国人観光客が利用者の中心として見込まれていますが、懸念される問題の一つが犯罪やテロ等、反社会的行為を行うための拠点として利用される可能性があることです。
訓練の実施
6月4日、警視庁公安部は不審な宿泊客が民泊施設を利用しようとした場合、警察に通報を行うための訓練を実施しました。都内目黒区で民泊事業を行う「ワールドポテンシャル」で行われた訓練では予約客とは別人が宿泊することを想定したもので、客がサングラスを取らない、パスポート写真の提示を拒否するという姿勢を見せたため、不審者として警察に通報するという内容でした。 2020年には東京オリンピック・パラリンピックを控えており、訪日外国人観光客はさらに増加し、民泊利用者も増えることが予想されることから、このような犯罪抑止の試みをさらに推進する必要がありそうです。
民泊仲介サイトから無許可物件が全削除
Airbnbでの対応
民泊施設を利用したい観光客は民泊仲介サイトに各民泊事業者が登録した案件から自分の予定に合った案件を検索し、予約をするという利用方法が一般的です。 民泊仲介サイトの最大手、Airbnb(エアービーアンドビー)は観光庁からの民泊新法を元にした違法民泊物件の宿泊取り消し等を求める通知を受け、6月2日に無許可の民泊物件を検索結果からすべて削除するという対策を行いました。
前倒しでの違法者への処置
Airbnbは民泊物件を同サイトに登録しているホストに対して民泊新法の届出番号や旅館業法の許可番号を入力することを求めており、民泊新法施行前の6月14日を期限としていましたが、観光庁からの通知が6月1日に発出されたことから前倒しで処置を行ったとのことです。
多数の予約キャンセル問題
Airbnbは無許可民泊物件の削除前までに宿泊予約が確定していた分についてはそのまま維持するとしていましたが、6月7日に民泊新法の施行が始まる6月15日から6月19日分の予約を強制的にキャンセルしたことから、6月20日以降の予約についてもキャンセルされる見通しとなっています。
強制キャンセルへの対応
Airbnbはこのキャンセルによって旅行の予定を変更さざる負えなくなった利用者をサポートするとして約11億円の基金を設立し、満額返金やクーポンを進呈する等の対応を準備していますが、出発直前に宿泊先をキャンセルされた訪日外国人観光客の混乱は続きそうです。
民泊新法施行で広がる波紋
年間の営業日数が180日間に制限されていること等、既に民泊事業を行っている事業者からすると採算が取れなくなるケースが多いことから届出を行っていない事業者が多いという新たな問題が起きており、Airbnbによるキャンセル問題もこの届出が進んでいないことが原因の一つになっています。 ゲスト双方が安心・安全に民泊を利用するためにも合法な事業として民泊が行われるべきですが、当初の目論見とは違う影響が出始めていることも事実です。 民泊新法への対策・対応は今後さらに各方面で必要になりそうです。