Google翻訳やskype翻訳など自動翻訳・通訳システムの発展は近年目覚ましいですよね。日本でも2020年の東京オリンピック、パラリンピックでの実用化に向けて、日本政府がこのAI搭載の自動同時通訳システムの開発に100億円投資をするということで、この夢の技術への期待感の高さが伺えます。確かに実現できれば、世界中の人と気軽にコミュニケーションできてしまうので、よりグローバル化が進むことが予想されます。ただ、実際のところはまだまだ完璧な実現は難しそうです。今の代表的なサービスから現状の問題を見ていきましょう。
1.Google翻訳
自動翻訳といえば、一番最初に思い浮かべるのはこれではないでしょうか。筆者も中学生時代、英語の宿題で日英翻訳をこれでやっていたこともありました。そんな誰でも一度は使ったことがある有名なサービスですが、深刻な問題があるようです。
そもそもどのように翻訳されるのか
GoogleのAIは検索エンジンから使用頻度や一般論を学習しています。今回の例文では『彼or彼女は誕生日を間違えた』とGoogle翻訳で入力した場合、どちらもher birthdayになってしまいます。通常、『birthday』の前に何らかの所有格をつけるのですが、日本語の方には指定する単語がありません。しかし、これは女性が誕生日を間違えられることが多いため、よくある方を選ぼうとherが取られています。というように、AI独特の翻訳方法が用いられています。
問題点
先ほど説明した通り、Google翻訳はAIを搭載し、人々が使えば使うほど関連学習をすることで、どんどん精度が高くなっていくように作られています。ここに落とし穴があります。実は無数のユーザーが自ら加筆修正することができるため、悪意やイタズラによるおかしな改変が減りません。人々がちゃんと使用していれば、問題は起きないかもしれないですが、それは人間を信用しすぎです。ちなみにこの画像は今入力したものですが、未だに改善されていないことが伺えます。
2.ウェアラブル音声翻訳デバイスili(イリー)
ウェアラブルデバイスの火付け役『Ring ZERO』。指輪型のデバイスでテレビや照明などの家電を操作できるとして大変注目されました。そのリングを作った会社が新しく作ったサービスが、ウェアラブル音声翻訳デバイスili(イリー)です。こちらはスティック型の即時翻訳機器で瞬時に音声翻訳してくれる優れものです。例えば、日本語で話した言葉がほぼリアルタイムですぐに英語に翻訳してくれます。そんな夢のデバイスですが、こちらも現時点では問題もあるようです。
問題点
中国のwebサイトで話題になっていたものです。要約すると、一方通行でしか使えないため、結局2台必要だそうです。具体例を元に説明すると、中国人ユーザーが日本人との会話をする時に、中国語で話した言葉を日本語に翻訳することはできるが、日本語から中国語には翻訳することが出来ないそうです。なので、結局1台だけでは双方向性のコミュニケーションは出来ず、2台必要というわけです。これを受けて、今後アップデートで対応すると正式に発表されています。
実用化はいつになるのか
確かに簡易な自動翻訳・通訳の出現で便利になってはいます。しかし、前回取り上げた『通訳・翻訳業界のこれからを考える〜自動翻訳技術は人間に取って代わるのか〜』でも書いた通り、もし実用化されても文化の理解や、場面による言い回し、相手の感情への気遣いなど機械にはまだまだ出来ない部分があります。さらに、長文での自動翻訳の精度や即時的な相互コミュニケーションなどの実現はもう少し先になりそうです。果たして東京オリンピックまでにどこまで実現できるのか、これからも目が離せないですね。