モノ消費からコト消費へと外国人観光客の消費行動が移行しつつあると言われる中、体験型ツアーの提案等をはじめ、受け入れ側の目は昼間の消費に向けられています。しかし、夜の楽しみ方に不満を感じる外国人観光客が少なくないと言われています。
外国人観光客はナイトライフに不満?
2017年10月の記事でも紹介しましたが、観光分野における日本の国際競争力は世界4位(世界経済フォーラム調べ)にランクインするなど、評価を高めています。 その一方、日本を訪れた外国人観光客が不満の一つとしてあげるものにナイトライフを楽しむ場所がないということがあります。 これは日本の伝統的な観光旅行が温泉旅館で食事をとり、その後外出せずに宿でゆっくり過ごす、というスタイルであることにも原因があるかもしれません。
ナイトライフの経済効果は巨大
現状、手つかずといってもいい日本のナイトライフを対象としたインバウンド施策ですが、バーや劇場、レストラン等の経済規模についてイギリス国内で調査を行ったところ、約9兆5700億円になるという試算結果となりました。 これを日本に当てはめた場合、なんと約80兆円もの経済効果が期待できるというわけです。
市場開拓のお手本はパープルフラッグ
イギリスでは荒廃していたリバプールを毎週末に人々が集い、ナイトライフを楽しむ場所として再生したという実績がありますが、「パープルフラッグ」という夜歩きを安全に出来る街を認定する制度を設けています。これによって犯罪対策、お酒の提供、酔っ払いへの対策、移動手段・交通網等を整備され、観光客をはじめとした初めてそこを訪れた人々でも楽しめるような工夫が施されるような仕組みです。 ある店舗だけが営業時間を延長すればよい、という問題ではなく、総合的な取り組みが必要となるだけに、日本においても自治体や公共交通機関等を含め、パープルフラッグのようなガイドラインを設ける等の動きが必要になるでしょう。
東の雄と西の雄に見るナイトライフ
東京と京都はそれぞれ外国人観光客が必ずといっていいほど訪れる都市ですが、それぞれのナイトライフエコノミー推進の先駆けとなる事例を紹介します。
時差ボケ解消がきっかけ?東京バーホッピングツアー
ライブラ株式会社が提供している「東京バーホッピングツアー」は3件のローカルな居酒屋をはしごするツアーで、アメリカやイギリス等からの外国人観光客が主な参加者です。 赤ちょうちんが灯る風情のある居酒屋は初見の外国人観光客には少々ハードルが高いところをガイドがつくことでホルモンや焼き鳥等のB級グルメや日本酒、焼酎等を楽しめるという点で従来から人気だったこのツアーですが、時差ボケがつらいという意見から従来の19時から21時までのツアーに加え、17時半から20時半までのツアーを追加することになりました。 ツアーが終わった後にも3件目、5件目を回れる時間があるため、終了後のナイトタイムエコノミーにも一役買っているツアーです。
言葉がいらないパフォーマンスが記録的ロングラン公演!
一方、京都ではノンバーバルパフォーマンス「ギア-GEAR-」が公演開始の2012年よりロングラン公演を続けなんと7年目に突入しています。 ノンバーバルとは言葉に頼らないという意味で、光や映像を駆使したパフォーマンスによって感動的なストーリーを紡ぎだすものです。言葉を使わないことで年齢や国籍を超えて同じ感動を共有できるという点が大きな評価を集めた理由の一つです。 7年目を迎えたこの春には更なるバーションアップを加え、より優れたパフォーマンスを目指す「ギア-GEAR-」はインバウンドコンテンツの成功事例として注目を集めています。
未開拓の市場をどのように開拓するかが課題
24時間運航の地下鉄やブロードウェイの公演開始時間が20時以降ということで知られるニューヨークや23時までオープンしているロンドン現代美術館等と比較すると日本のナイトライフエコノミーはほとんど手付かずの状態だと言えます。 クリアするべき問題は多く、課題が山積しているとはいえ約80兆円の市場は見逃せません。政府や自治体も含めた取り組みが市場開拓のカギとなるのではないでしょうか。